自分に合った取引手法を考える

今回は”自分の性格や信念に合った取引手法を見つける”という事について考えていきます。

 

トレードで利益を出し続けるためには、長期間のトレード経験や過去チャートを使用した検証などでプラスの期待値が確認された手法を使い続ける必要があります。堅苦しく書きましたが、つまりは利益を安定して出せた事のある手法を続ければ利益が出るよ!という事です。

これは一見簡単で当たり前の事のように思えます。つもり売買をしてみたり過去のチャートを使ってトレードをしてみると分かるのですが、練習をすれば殆どの人が安定して利益を出せるようになると思います。

 

しかし、実際に自分が時間をかけ苦労して貯めたお金が動くトレードとなると、損を取り戻したい気持ちや焦りの影響でリスクの大きい運否天賦の勝負をしてしまったり、優位性のある手法を放棄して、その場の勘や思い付きでランダムに近いトレードをしてしまったりします。

利益を出すには、勝率が50%以下(トレンドフォローでは一般的な確率です)の場合、平均利益が平均損失を上回っていなければいけませんが、利益が減る事を恐れて時期早々に利益を確定したり、含み損が減る事を願って負けているポジションを放置し損失を拡大させたりといった行動を続けてしまい、安定して損を出し続ける結果になります。 

資金管理が疎かになる事や手法の放棄というものは感情のコントロールができなくなった結果であり、そもそもの感情が恐れや強欲に支配されてしまうという問題は、人間の脳の構造や習性に起因するものです。

 

では、感情に支配されずに一貫して手法を使い続けるにはどうするか。それには以下の2つの方法が挙げられます。

 

 ・何がなんでも手法に従う

 ・感情が動かない人間になる

 

1つ目は、トレード中に自分が何を感じようと鋼の意志で優位性のある手法に従います。

損が膨らんだ時の恐怖、含み益が減っていく恐怖、早く稼がなければという焦り、これら全ての感情を無視して、手法に従います。

コンピュータに自動売買をさせるシステムトレードだったり、自動でなくても機械的にシグナルに従って取引を行うメカニカルトレードがそれにあたります。

これは確かに有効な方法ですし、成功しているトレーダーの中にシステムトレーダーは沢山います。しかし、システムトレードなら感情は関係ないかと言うと、そうでもありません。

どんな時期でも利益を出し続けられる手法(聖杯)というものは存在せず、連敗をする時期が必ずあります。システムがドローダウンを被った際には、このシステムで本当に良いのだろうか?システムを止めるべきでは?と、人間である以上どこかで必ず感情の影響を受ける事になります。

 

そこで2つ目は、そもそも感情が動かない人間になるという事です。

熟練したトレーダーの中には本当に損益が感情に影響しないという人もいますが、そのような境地に達するにはやはり長時間の練習、経験、知識が必要です。そもそも、その過程で皆苦労している訳です。

 

という事で、ここで3つ目の”感情が動かない手法を使う”という考えが生まれます。

上記の2つを熟練してできるようになるまでの間、全く感情が動かないという手法は難しくとも、できるだけ精神的に無理なくトレードを行う事のできる、自分に合った手法を見つけます。

 

人それぞれ生まれつきの性格や過去に経験した事などから、行いやすいと感じるトレードは違ってきます。

トレードというものは自由に仕掛けと手仕舞いを決められますし、複数の市場や複雑な金融商品を組み合わせれば手法は無限にあるように思えますが、手法を構成する要素としては主に以下の3つだと考えています。

 

 ・時間軸

 ・順張りor逆張り

 ・個人の信念

 

1つ目は、時間軸です。

数秒~数分の値動きを掴み、少しの利益を大量に積み重ねていくスキャルパー、

数分~数時間のトレードを行い、基本的に日中に手仕舞うデイトレーダー、

数日~数週間ポジションを保有するスイングトレーダー、

数週間~数か月以上ポジションを保有するポジショントレーダー(投資家とも言えます)、

そして株を年単位で保有する投資家、など色々なスタイルがあります。

 

スキャルパー・デイトレーダーは日中の素早い値動きを狙うので、持続的に集中できる人が向いていると言えます。

トレード数が多いため手数料も多くかかりますが、小さな利益でも長期的に見れば複利の力で凄まじい利益になります。

相場が開いている間は常に画面に張り付いていなければなりませんので気力と体力が必要で、兼業では不可能です。

その代わりポジションを保有したまま日をまたぐ事が無いので、翌日のギャップを悪い意味で気にするという必要はありません(FXや米国株などは別ですが)。

既に成功していて数億円以上の資金があるという場合の話になりますが、資金が大きくなると自分の注文で株価が動いてしまうため、こういった日中のトレードは難しくなってくるようです。

 

スイング・ポジショントレーダーは、日中の動きは気にせず日をまたいだ値動きを狙っていくスタイルになります。

基本的には事前に指値や逆指値で注文をしておき、相場が開いている間に取引の判断をするという事はありません。

日中の時間を相場の研究や読書、休暇などで有効に使う事ができ、兼業で行う事も可能です。

ストップ高・ストップ安を超えた大きめの利益が狙える代わりに、思惑と逆方向に動いてしまう可能性もあるので、相場が閉まっている間もポジションの事が気になってしまうという事が起こり得ます。

よく耳にするような「相場が気になって夜も眠れない」という話ですね。

 

ポジショントレーダーもそうですが年単位で相場を考える投資家のスタイルは、これから先の経済の事を考えたり、成長しそうな企業を研究するのが好きだという方に向いています。

もちろん取引をする以上値動きを狙っていく訳ですが、人間の恐れや強欲などの感情で動いていると考えられる短期の値動きと違い、年単位での株価というものは経済状況や企業価値、それらを考える人達の意見の総意などの方が大きく影響され、もっとマクロな視点で動いていると考えられます。

そのため値動きを研究するというよりかは、経済や企業のこの先を長期で見据えていくというスタイルになります。

 

時間軸が大きくなればなるほど複利の力も小さくトレードの経験も積めないと思えたりもしますが、そんな事はありません。

世界の投資家の中で一番の資産を持つウォーレン・バフェット氏は言わずと知れた超長期投資家ですし、長期の投資家が企業について研究するという事は、成長企業の値動きを研究するという事でもあります。どんな企業の株価が上昇するのか研究するという事は、その分トレード(投資)の経験を積んだという事でもあります。

スイングトレードも、デイトレードと比べれば実際のトレード数はかなり少なくなりますが、過去1年のチャートを使用して、事前に決めた手法通りにしっかりトレードの練習をすれば、それは1年のトレード経験を積んだという事と同じ意味を持ちます。

 

次は2つ目の、順張りor逆張りについてです。

まず適当にそのへんの上昇トレンドをぶっこ抜いてきます。画像小さくてすみません。

 

 

 

 

 

順張りとは、このように現在の値動きの方向に合わせて取引をする手法です。

トレンドフォローという言葉も同じような意味合いです。相場がいつ反転するかなんて誰にも分からないので、今上がっているなら買い、今下がっているなら空売り、という感じですね。

 

次に適当にそのへんのレンジ相場をぶっこ抜いてきます。

 

 

 

 

 

 

逆張りとは、このように過去の値動きから予想して現在の値動きとは逆方向に取引する手法です。

今は下がっている最中だが前回この辺で反転して上がり始めているので買い、今は上がっている最中だが前回この辺で反転して下がり始めているので売り、という感じですね。

 

右肩上がりのトレンド相場で、 上昇後に少し下がり再び上昇を始めたのを確認したので買い、というのは順張りです。

上昇後に少し下がったが、そろそろ上がりそうなので買い、というのは逆張りです。

 

逆にジグザグのレンジ相場で、前回反転した株価に近いので買い、というのは逆張りです。

前回反転した株価で反転を始めたのを確認したので買い、というのは順張りです。

一般的には、逆張りで天井・底を当てようとするよりも、順張りでトレンドを捉えるのが良いとされます。

 

そして3つ目は、個人の信念です。

値動きはどのような仕組みで生じているのか、利益を出し続けるためには何が大切かなど、人それぞれ信じている事は違います。

テクニカル派とファンダ派のどちらが正しいかなんて議論を耳にする事がありますが、どちらのやり方でも成功している人がいる以上、どちらも正しいんですね。たとえどんな考え方を持っていたとしても、自分の信念を大切にして努力を続けていけば成功できるというのが相場という世界の良い所だと思います。

一つの事を信じ続けるのも信念ですし、第三者に言われた意見だとしてもそれを自分が本気で信じられるならそれもまた新しい自分の信念となります。

さらに細かい話になりますが、今までの人生で失敗が多かったりすると、自分の行動に自信が持てず損切りラインが浅くなったりしますし、自分に自信のある人は大き目のロットを取ったりする傾向にあります。

これはどちらもその人に合ったやり方で、どちらも正しいんです。これらが欠点だと信じるなら改善する努力をすれば良いですし、改善する必要がないと信じるなら、その部分は変えずに利益を出せるやり方を新しく考えれば良いんです。

過去のトレードを見直していると、自分の性格がよく出ているなと感じる事が多々あります。感情に支配されやすい性格となると話は別ですが、殆どの個性や信念は、それを逃げずに自覚し意識していけば、自分の行いやすいトレードを見つける鍵となります。

 

上記のように、トレードには色々なスタイルがあります。

その中でも自分に合ったスタイルであれば無理なく長く続けていけますし、どんなやり方でも大切なのは現実をしっかり見て研究と改善を続けていく事だと思っています。自分の手法を心から信じる事ができれば、せっかく見つけた優位性のある手法を一時の感情で手放してしまうという可能性も低くなります。

 

人間の考えというものは常に変わっていくもので、だからこそ世界に値動きというものが生まれます。そして相場は生き物のようなもので、今使っている手法が1年後に通用するかどうかも分かりませんので、毎年有効な手法が変わっていったりもします。

長年同じスタイルを続けて成功している人もいれば、定期的に手法を変えて成功している人も沢山います。

しかしそれは手法の有効性をしっかりと検証した上で手法を変えているのであって、検証する間もなく短期間で都合よく複数の手法を乗り換えて良いとこ取りをする、というのはとても難しいという事です。

どんな手法でも連敗してドローダウンを被る時期は必ずありますが、上記のように連敗する時だけ他の手法に切り替えて利益を出すという事をしようとすると一貫性がなくなってしまい、その手法に優位性があるのかすらも分からなくなってしまいます。

ドローダウンは絶対に避けられないという前提の上で利益を出し続けられる手法というものが、本当にプラスの期待値を持っていると言えます。

 

 

ー2021年7月3日(土)ー